7月3日 読売新聞 よみうり寸評
<モンキー乗り>―短いあぶみ、背中を丸め、腰を浮かせて乗る。今の競馬では当たり前の騎乗法
だが、これを初めて米国で学び、日本にもたらし定着させたのは保田隆芳騎手だった。1958年(昭和33年)に、前々年の日本ダービー馬ハクチカラと共に渡米した際の収穫だった
「もはや戦後ではない」の時代の事で日本馬初の海外遠征だった。保田騎手の帰国後も米国に残ったハクチカラは翌年2月、サンタアニタ競馬場の重賞レース「ワシントンバースデーH」で優勝した。日本馬の海外の勝利はここに始まる
保田さんは戦前、名門・尾形藤吉厩舎に入門。ダービー、皐月賞、菊花賞、桜花賞、オークス、天皇賞(春・秋)、有馬記念の8冠を制した最初のジョッキー
天皇賞10勝は武豊以前の記録で元祖「盾男」。1000勝到達第一号騎手で通算1295勝。調教師としては、メジロアサマ、トウショウボーイなどで334勝
名伯楽・保田隆芳逝く。89歳。近代競馬の礎を築いた先駆者を悼む。