7月9日 読売新聞 よみうり寸評

 <美しい牧場>―ウルムチとはそういう意味だ。中国新疆ウイグル自治区の区都。高層ビルが立ち並ぶ大都会で牧歌的な情景は昔のこと
 経済的発展はいいとして、元牧場が今や<パレスチナ化>の過程にあるといわれる。ウイグル族と漢族の互いの憎悪が流血の衝突にエスカレートして、パレスチナ化とは深刻だ
 ラクイラ・サミットの出席をとりやめ、胡錦濤国家主席がイタリアから急ぎ帰国した。なりふりかまわずの帰国が5日以来の事態の深刻さを物語る
 主席自らの指揮で早期の沈静化をはかるということだろう。北京五輪の昨年はチベット自治区で、今年はサミットの時期に新疆ウイグル自治区で、騒動が続く
 「西部大開発」と称して、中国政府はこれら少数民族自治区に大量の国家資金をつぎ込んできた。が、自治区を安定させるには経済成長だけでは限界がある
 国家資金と共に漢族も多数入ってきた。民族融和を唱えても、ウイグル側の文化、宗教、自主権は抑えられているという不満が深い。