7月2日 読売新聞 よみうり寸評

 <なんちゃって>―いかにもインチキで軽薄な響きがある。ジョークならいいが、それが病院で手術とのかかわりで使われていた
 「これは<なんちゃって>にしといて」といえば架空手術のこと。架空の偽装カルテには黒、実際に手術したなら赤のペンが使われていたという。架空はとんでもないが、こんなインチキ病院なら、手術されても怖い
 しかも、その病院の入院患者は半数前後が生活保護受給者。医療費は行政が負担するから「福祉の患者はとりっぱぐれがない」とうそぶいていたという
 <赤ひげ>の貧乏人に慕われる医療なら<仁術>だが、同じ生活困窮者が患者でも<なんちゃって医療>はここまで落ちたかと思わせる許し難い<錬金術>だ
 そんな病院、奈良県大和郡山市の医療法人雄山会山本病院の理事長と病院事務長が生活保護受給者の診療報酬を不正に受給した詐欺容疑で奈良県警に逮捕された
 架空の心臓カテーテル手術が直接の容疑だが、手術や検査が不自然に多いともいわれている。