7月7日 読売新聞 よみうり寸評

 <素直>という名が泣いている。その名と放火、殺人の容疑との落差は大きい。自ら出頭してきたところだけが、わずかに素直か
 大阪市此花区のパチンコ店「CROSSニコニコ」に放火したと出頭してきた男は「高見素直」と名乗った。現場から400㍍のマンションの独り暮らし
 素直とは、名付けた人の願いがうかがわれるが、とんでもない犯行に及んだ。名は体を表さず。ひねくれて素直でないのは、もう41歳だから、本人の責任だ。本来なら分別盛りの年齢ではないか
 それなのに「複数の消費者金融から借金がある。仕事も金もなく、人生に嫌気がさして、通り魔みたいに人を殺したいと思った」などとうそぶいている
 また「だれでもよかった」の不条理がくり返された。不特定多数の殺傷は秋葉原、荒川沖などの事件と同じだが、今度は<アラフォー、昔なら不惑>の犯行
 「だれでもいい」標的が自分だとしたら、どうなんだ。考えてもみないのか。こんな無分別に命を奪われた4人の無念は限りない。