7月6日 読売新聞 編集手帳

 「レイキャビクで、核のない世界を目指す私の希望は、しばし舞い上がったのち地に落ちた」―米国のレーガン元大統領は、決裂に終わった1986年10月のゴルバチョフソ連共産党書記長との米ソ首脳会談をこう回想している
 核軍備競争に邁進した冷戦時代の両超大国の指導者が、核戦力の大幅削減という劇的合意を目前にしながら、握手もなしに別れたのは、宇宙空間で核ミサイルを破壊する米国の戦略防衛構想(SDI)が原因だった
 それから23年。同じく「核のない世界」を究極の目標に掲げるオバマ米大統領がきょう、モスクワ入りし、ロシアのメドベージェフ大統領との首脳会談に臨む
 レーガン時代の交渉を基礎に、米露両国は、戦略核弾頭の数を、冷戦期の60%程度まで減らした。それをさらにどこまで削減できるのか。今回、ロシアは米国のミサイル防衛(MD)の東欧配備に強く反発している
 オバマ大統領は、「核兵器を使用した事がある唯一の核保有国として米国には行動する道義的責任がある」と宣言した。その言葉通り、核軍縮で成果をあげられるのか、大いに注目したい。